エンゲージメント経営コンサルティング【ツナグ|TUNAG】

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お客様インタビュー

「ハードだけでは生産性は上がらない」
阪急阪神ビルマネジメントが“ワーカーコミュニティ”に取り組む理由

2019年7月2日、株式会社フォーシーカンパニーと共同で、阪急阪神ビルマネジメント株式会社が梅田周辺地区で管理・運営するオフィスビルにおいて、ワーカーエンゲージメントを高める働きかけのプロジェクトをスタートしました。

リモートワークや、コワーキングスペースなど働き方が多様化している今、企業が「オフィス」に求める機能は、働くだけの場所ではなくなってきています。ハード面の提供のみならず、コミュニケーションやコラボレーション、さらには社員の成長を促す場所としての付加価値がより求められる時代になってきました。

そこで、共同プロジェクトを発足し、ビルとそこで働くワーカー相互間を繋げるプラットフォーム 「TUNAG for Hankyu Hanshin workers」を立ち上げ、様々な情報提供やイベント企画などを実施することで、コラボレーションやコミュニケーションを生む「場」を創造していくこととなりました。

今回は、そのプロジェクトを発足するに至った背景や、発足までの道のり、目指している姿について、株式会社フォーシーカンパニー代表取締役 中澤様、阪急阪神ビルマネジメント株式会社 津谷様にお話を伺いました。

ビルで働く人をつなげるコミュニティを立ち上げた背景

ハード面だけを整えていても、選ばれるビルにはならない

〜まず、今回のようにビルとそこで働く人をつなげるコミュニティ「TUNAG for Hankyu Hanshin workers」を立ち上げるに至った背景を伺えますか?〜

阪急阪神ビルマネジメント株式会社 津谷様(以下敬称略):今、ワークプレイス(働く場所)が多様化していますよね。働き方改革、生産性向上というワードが出始め、そこから「働く場所も大事では」という声がでてきました。

欧米の考え方が日本に流れてきたと思うのですが、欧米では、働く場所はコミュニティの場所であって、そこからコラボレーション、イノベーションにつながる……という流れができています。ただ、日本における生産性向上と、ワークプレイスの関係が、自分としてはあまり一致していないと感じていました。

〜欧米の考え方がうまく輸入できていない、ということでしょうか?〜

津谷:欧米だと、基本的には成果主義で一人ひとりが成果を上げるために仲間とコミュニケーションをとって、新しい価値創造を起こそう……という流れでワークプレイスが成り立っているのに対して、日本はとりあえずハードとしての「場所」を用意して、人事制度などはそのままになっていると思うんです。

〜そのような中、2015年に、今の「TUNAG for Hankyu Hanshin workers」にもつながるワーカーズ向けのサービス「阪急阪神ワーカーズウェブ(※1)」を立ち上げられていますが、この頃から課題意識があったのでしょうか。〜

※1…梅田阪急ビル、ハービスOSAKA、ハービスENT等のオフィスワーカー約1万8,000人を対象に、優待特典・イベント情報などの提供を行うWEBサイト

津谷:そうですね、私は2012年頃からオフィスの運営管理の業務を担当しているのですが、当時はリーマンショック後に続く不景気で空室率が高く、関西圏は供給が過剰だったんです。賃料は下がる、テナント様は抜けていく……という良くない状況でした。

そもそも、オフィスが選ばれる理由は、「立地」「スペック」「コスト」の3点という固定概念がありましたが、この時、この3つだけに頼らないオフィスの強みが無いだろうかと考え、コミュニティ運営のパイオニアであるフォーシーカンパニーの中澤社長と2013年頃から企画を始めました。

ビルで働く人から「コミュニティ」に対する要望の声があった

〜そこから、「コミュニティ」という考え方に移ったきっかけは何だったのでしょうか?〜

株式会社フォーシーカンパニー 代表取締役 中澤様(以下敬称略):対象となるビルで働く方にアンケートをとって聞きました。みなさんが求めているのはベネフィットなのか。一度聞いてみようと。そうすると、「社外の人とコミュニケーションをとりたい」「オフィス近くで学びを得る機会がほしい」という声が多くありました。

もちろん、阪急阪神のビルですので、クーポンなどのベネフィットも期待されていましたが、それよりもコミュニティに対する要望が強かったんです。そこで「コミュニティの提供」を価値として打ち出すことにしましたね。ただ、普通のやり方ではなく、阪急阪神だからこそできるコミュニティのあり方、強みを持ったものにしようと思っていました。

津谷:2015年の春、シリコンバレーの企業に視察に行った時に、欧米型の働き方を目の当たりにして、ここで改めて「コミュニティ」の重要性を感じたのが大きいです。自分の価値を高めるために、能動的にコミュニティに参加し、学びを得ている姿ですね。ヒエラルキー型で指示待ち体質な日本企業は、このままでは本当に世界からおいていかれるのではないかと強く思いました。

ビルで働く人をつなぐ「コミュニティ」をどのように作っていったか

ベネフィットを提供する「情報サイト」からスタート

〜「コミュニティ」を提供するというコンセプトが決まった中、一番始めに何から取り組んでいったのでしょうか?〜

中澤:はじめに「阪急阪神ワーカーズウェブ」を立ち上げました。まずは、「コミュニティ」という形の無いものに大きな投資をするという形ではなく、WEBサイトという目に見えるものとして、ビルの情報が見れて、阪急阪神が持つベネフィットを提供していくものとしてスタートしました。

津谷:ビジネスなので、投資するには、具体的にそのビジネスの可能性を提示しなければなりません。WEBサイトの立ち上げは、ビル情報の提供をテナント様にデジタルで発信でき、サービス向上に繋がります。

また、ベネフィットの点で、阪急阪神が持つ経営資源、グループ力をこれまで以上に効果的に提供していくには梅田に毎日足を運んでいるワーカー様とグループ資源をWEBでマッチングできればより展開が広がるだろうと考え、まず情報サイトからスタートしました。

情報サイトだけでは、「コミュニティ」の提供が難しい

〜ワーカーズウェブでは、最初からイベントを活発に行っていたのでしょうか?〜

津谷:そうですね、朝活、夜活、講演会など当初から年間20件以上の交流イベントを行っていて、朝活や夜活はサービス開始からこれまで各々30回近く実施しています。

〜その頃と今、取り組みに違いはありますか?〜

津谷:総花的に提供していくのではなく、ターゲットを絞っていかないと、本来目的としていたコミュニケーションやコラボレーションは生まれないと思いましたね。その中で、「ターゲットを絞るのって、リアルだけでできるのか?」「コミュニケーションはリアルの場だけで深まるのか?」という疑問が湧いてきたんです。

そこに、若い世代のスタッフから「今はSNSですよ」という声が出てきたことが、次のステップに進むきっかけになりましたね。

中澤:リアルでコミュニケーションをとる仕掛けはできたのですが、リアルで接点が生まれた、その「後」どうなってるの?というところが分からなかったんです。何か仕事につながったのか、コラボレーションが生まれたのか。それはイベントだけでは見えない。

コミュニティを作り、その価値を提供していきたいのに、生まれたコミュニケーションをどう追いかけたらいいのかが課題でした。「阪急阪神ワーカーズウェブ」は情報提供型のウェブサイトでしたので、もっとコミュニケーションがとれるものを探し始めたんです。

一方通行の情報発信ではなく、双方向のコミュニケーションが生まれる場が必要

〜リアルで接点をとった後の動きは、全く見えなかったのですか?〜

中澤:イベント後でLINEを交換して、その後そこでやりとりをされると、当然我々は分かりません。ですので、ヒアリングに行くしかなかったんですよね。それって大変じゃないですか。

そういった点からサービスを探していて、TUNAGに出会いました。TUNAGならコミュニケーション機能があり、双方向のやりとりができますし、我々が事務局としてサービスを提供することで人の動きもわかりますので。

津谷:TUNAGは企業向けに展開されているサービスでしたが、私達が考えるコミュニティ向けにできないかと相談したんです。我々はこのプロジェクトを運営する「事務局」を持っていましたので、事務局が使えて、コミュニティに入り込めるもの。そういったものとしてTUNAGがぴったりでした。

〜そのような「事務局」は他の会社では持っていない機能なのでしょうか?〜

中澤:ビルで働くワーカー向けのコミュニティを管理する事務局を持っているところは弊社以外はなかなか無いと思います。そもそも、ビルで働くワーカーのコミュニティというもの自体、ネガティブなコミュニケーションが生まれるかもしれないので、そこをリスクだと思っている会社の方が多いのではないでしょうか。特に日本は運用にかかるコストを払うことを嫌がる傾向にありますよね。

※TUNAG for workers について

「コミュニティ運用」こそ、コストをかけてモデル化しなければならない

〜運用にかかるコストに投資したがらない…という点は、企業の人事制度や取り組みの運用でも同じことがいえますね。〜

津谷:欧米のような契約社会では、自らコミュニティに入って、必要な知識を得て、価値を生み出さないと、明日から生活できないという世界じゃないですか。日本は色々な制度を用意してもらって、終身雇用で年功序列で……という状態だと、そんな世界が来るかもしれないということに気づけません。

今、時代が変わろうとしている時だからこそ、コミュニティ運営のプロに入ってもらって、しっかり社内での運用モデルを作ることがより求められていると思います。

中澤:町内会の会長とか、そうやって地域をまとめていましたよね。そういう役割の人が地域でも企業でも少なくなっていますね。

津谷:企業でも、あまり偉くないけど「ちょっと飲みに行こうか」みたいに誘ってくれる面倒見のいいおじさんって昔いたじゃないですか(笑)。そうやって若い子の面倒をみてくれる人、なんとなくなごやかなムードを作ってくれる人。

それがバブル崩壊以降だんだん時代と共になくなって、そういう人がいなくなってきたので、プロを入れて、しっかり運用できる体制をつくることが本当に必要だと思いますね。

ワーカー同士のコミュニティは、働く人、入居企業双方にメリットがある

入居企業の経営者にとって、ワーカー同士のコミュニケーションは「メリット」しかない

〜ワーカー様向けには魅力的なサービスに見えますが、対企業向け、入居企業の経営者の方の印象はどうでしょうか?ネガティブに捉えられたりしませんか?〜

津谷:ネガティブに捉えられることは一切なく、むしろ逆だと思っています。今、働き方改革が進む中で、長時間労働が見直されていますよね。社員の働く時間を短くしていこうとする動きが出ています。

でも、人事や経営層は、「帰ってテレビ見てていいよ」って思っているわけではないと思うんです。空いた時間で社員に生産性が高まるような自己研鑽や、他の人とのコミュニケーションを通じて「自己成長して欲しい」と思っていると思うんですよ。

それが、自分たちの働くビルで提供されていて、阪急阪神のビルに入居している他の企業の人と交流できて、かつ、会社が強制せずに社員が“自分の選択”で個人として申し込んで能動的に動いてくれている。これは「会社にとってありがたいことだ」という声を頂いているくらいです。

〜テナント企業様が「リスク」だと思いがちな部分が、逆にメリットになっているんですね〜

中澤:私も経営者なので、同じように思いますね。経営者としては、社員の教育の機会を設けたいんですよ。ただ、教育研修の計画時に、さまざまな職位、職種により優先順位があり、すべてにいきわたらないこともありますよね。

そこを、入居しているビルからサービスを提供してもらって、社員が自ら学び、能動的に活動してくれる。「このビルに入ったら、ビル側から代行してやってくれるよ」という捉え方をすると、すごいメリットですよね。経営者が会社として行う教育と、このようなコラボレーションの場での教育って、学ぶことが違いますし。新しい側面の教育を無料で受けさせてもらえて、従業員が能動的に受けてくれるって、メリットしかないですよ。

TUNAGは、会社からの強制ではなく「半分私人」としてコミュニティに参加できる

※TUNAG for Hankyu Hanshin workers の画面です。イベントや講座の案内だけでなく、ワーカー同士がつながれるサークルへの入部申請もできます。

津谷:TUNAGを入れた理由の一つでもあるんですが、私達が提供するサービスに参加する社員の方って、「半分私人」というような形で参加しているんですよね。我々のビルに入っている会社の方なので、「会社として」受けているサービスですが、参加するのは「個人」の意思です。

これって面白いですよね。完全に私人として参加すると、どうしてもLINEとかFacebookとかでやりとりすることになるのですが、最初から自分を全部さらけ出せる人って少ないじゃないですか。このように半分オフィシャルな形でコミュニティに入ってみて、親しくなったら個人をオープンにする。その「入り口となるSNS」というところで、TUNAGを活用できるのが良かったなと思う点ですね。

中澤:TUNAGだと半分私人という立場で参加できるので、我々が行いたいコミュニティにマッチしていると思います。アンケートでも、「自分の個人をさらけだしたくない」という声はたくさんいただいていて、みなさん、プライベートのアカウントを開示するのは勇気がいるんですよ。

我々がコミュニティを提供するのであれば、「会社の社員としての自分」でまず参加できるものを用意しないといけないと思いましたね。

津谷:日本人は「組織に属している」という意識が強いのかもしれませんね。ですので、この取り組みを通して、「自分で能動的に申し込む」という行動が増えれば、社員の学びにつながり、生産性向上につながって、会社も成長する。そんな循環を起こせるのではないかと思います。

中澤:コミュニティに参加するために、ちょっと背中を押してあげられるといいですよね。TUNAGはその仕組みを持っていると思います。自ら手をあげるのは難しいけど、手を差し伸べると参加してくれる……。この仕組みは、今回のようなワーカー様向けコミュニティだけでなく、企業としてもちゃんと投資していくことが求められると思いますね。

津谷:最初に話した、ハードだけ変えて、運用モデルが無いっていうことに戻りますよね。フリーアドレスやABWを入れました……、その結果、「連帯感」が失われているという声も事例としてよく聞く話です。島型で今まで顔を合わせて会話をしながら仕事をしていたのに、「どこで仕事してもいいですよ」と言われてしまうと、組織に属している人たちが自分の意識をどこに持っていけばいいのか分からなくなってしまう。

ちゃんと運用モデルや人事制度とも合わせていかないといけません。ただ、オフィスを提供するデベロッパーとしては、テナント企業様の人事制度まで変えられないじゃないですか。ですので、ワーカー様たちの学びを促すような仕組みを作って運用しています。きちんと「事務局」を設けていますしね。

今後目指している理想の姿

従業員からも、経営者からも「選ばれるビル」であること

〜最初のお話にも「ワーカー様の生産性を上げる」という言葉が出てきていますが、この取組から最終的にどんなことを目指していますか?〜

津谷:やはり私達はオフィスを提供するデベロッパーに属していますので、一番は、経営者の方にも、従業員の方にも、”このビルしかないよね”と言ってもらうことですね。最初にお話した、「立地」「スペック」「コスト」これだけでビルを選ぶのではなく、ソフト面や阪急阪神というブランドも踏まえてビルを選んでいただけること。これが一番目指しているところです。

そのためには、コミュニティによって、ただ「お友達ができた」というところで終わらず、経営者から見ても、このビルでコラボレーションが生まれ、仕事がつながり、社員の意識が変わった。という変化を生み出したいんです。

例えば、「同世代で、同じビルに入っているあの子が頑張っているから、自分も努力しよう」とか、「あのビルのあの子がすごい挑戦をしているから、私もやりたいです」という声が出てくる。それを経営者が実感する。そんな循環ができることが理想ですね。そうすると、ビル自体の価値も上がっていきます。

中澤:この取り組みから、日本人の生産性向上につながるコミュニティやワークプレイスのあり方を確立したいですね。

〜津谷様、中澤様、お話いただきありがとうございました!〜

(インタビュー:株式会社スタメン執行役員 森山裕平)